
(2)外航海連・船員問題懇談会(懇談会)の報告 運輸省海上交通局長の私的諮問機関として設置された懇談会は、平成7年1月から行ってきた検討結果を1司年5月に報告書として取りまとめた。 報告書は、日本籍船や日本人船員の急激な減少を示し、その原因として、他のアジア人船員に比べ1人当たり約1,000万円にのぼる日本人船員のコスト高だげでなく、諸外国と比較して割高な税や、より厳格な船舶検査等の規制を挙げている。それに近年の円高が拍車をかけ、このまま放置すれば日本籍船と日本人船員は、現在製造業で起きている空洞化以上のものに進展していくおそれがあるとして、真空化という強い表現で警告を発している。次いで、日本籍船や日本人船員の必要性を、物資の安定輸送、輪送の安全や環境保全、海技の維持、緊急時における信頼性等の面から強調しているが、他方で、「もはや混乗促進や少数配乗による従来型の手法では、(コスト競争力上)限界に近づきつつある」としている。 そこで、我が国と同じ経験を経ている欧州における対策を例にとり、構ずべき真空化対策として、船員税制・船舶税制の改善、海運助成、諸規制の緩和を挙げ、さらに乗組員配乗を船・機長の2人を原則とするところまで絞り込んだ日本籍船を可能とすることも併せた、総合的な国際船舶制度の創設を提案した。 その一方で、「仕組船は現実には日本籍船以上に我が国商船隊の中核を構成し、同時に日本人船員の雇用機会を確保している」と評価している。さらにその関連で、円高の進行により日本籍船の維持が困難となった事業者に雇用される仕組船配乗船員の船員保険資格を継続させるような制度的対応を求めている。 その他、将来の日本人船員の役割、日本籍船に配乗する外国人船員対策、外航部員対策、苦境の続く我が国コンテナ輸送部門の対策等、現在の外航海運が抱える問題について広く言及しており、さらに立場が異なる委員の対立した見解を示しているところもある。 (3)運輸省による平成8年度の予算・税制要求 外航海運・船員間題懇談会がまとめた報告書に基づき、運輸省は平成8年度の予算・税制に関して国際船舶制度の創設を要求した。その主な内容は以下のとおりである。 ?@国際船舶に関する固定資産税、登録免許税の非課税化 ?A日本人船員に対する国税、地方税の減免措置 ?B国際船舶に対する日本人船員と外国人船員のコスト差補填などの国家支援措置 ?C日本人船員の船長、機関長の原則2人配乗 ?D外国人船員確保のため、外国語による試験など必要施策の実施 ?Eドル建て併用の政策金融の充実など各種緩和策これらの6項目を「ワンパッケージ」で実施することを基本方針として、当初議員立
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